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パーキンソン病のリハビリで知っておくべき10個の方法

パーキンソン病でお悩みの患者様やそのご家族に向けて理学療法士の立場から症状やリハビリ方法について紹介します。
この記事では、パーキンソン病のリハビリの概要について知ることができますので参考にしてみてください。

パーキンソン病はなぜリハビリが必要なのか

パーキンソン病は、脳の中脳黒質という場所の神経が働きにくくなることで、ドーパミンという神経伝達物質が不足し発症します。すると、身体が動きにくくなったり、勝手に手足がふるえたりと様々な症状が出てきます。パーキンソン病は進行性の病気のため、次第に立つ・歩くといった日常の生活動作にも支障をきたすことが多いです。病気の進行を遅らせ、身体の機能維持や日常生活動作を行いやすくするためにリハビリが重要とされています。



パーキンソン病の症状について

パーキンソン病の症状は運動症状と非運動症状の2つに区別されます。


運動症状

・振戦(じっとしている時に手足などがふるえる)

・無動(素早く動けない、動き出しが行いにくい)

・筋強剛(筋肉が硬くこわばる)

・姿勢反射障害(ふらついた時に立て直せずに転びやすくなる)


非運動症状

・自律神経症状(便秘や頻尿、起立性低血圧(立ちくらみ)、発汗異常、むくみ、冷えなど)

・嗅覚障害(においを感じにくくなる)

・睡眠障害(不眠、眠れない、眠りが浅い)

・精神症状(抑うつ気分、不安)

・疲労(疲れやすい)


代表的な運動症状のみではなく、近年では非運動症状に関連した問題にも注目が集まっています。



リハビリ方法について知っておくべき10個の方法

それでは本題であるリハビリ方法についてまとめていきます。


理学療法

パーキンソン病は運動症状の影響でバランスや起立・歩行能力が低下しやすくなります。

理学療法ではストレッチ、筋力トレーニング、基本動作練習、歩行練習、日常生活動作練習と呼ばれるリハビリを行います。

①ストレッチ:手足や首・体幹など筋肉の緊張が強い部位や関節可動域が狭くなっている関節に対してストレッチを行います。

②筋力トレーニング:姿勢保持や歩行に重要な体幹・下肢を中心とした筋力トレーニングを行います。

基本動作練習:起き上がる、立つ、座るといった基本的な動作を練習します。

④歩行練習:平地や屋外などで歩く練習をします。トレッドミルという歩行トレーニング用の機械を使うこともあります。

⑤日常生活動作練習:日常生活に必要な階段の上り下り、トイレ動作、入浴動作などを練習します。


⑥作業療法

パーキンソン病では薬の袋をあけることやパソコンのタイピング、ボタンのつけ外しなど指を使った細かな生活動作が苦手になりやすいです。

作業療法では手の細かい運動を行う巧緻動作練習や上肢の反復運動をエルゴメーターという機械を使って実施します。また上肢を用いた日常生活に必要な作業の練習などを行います。


言語聴覚療法

パーキンソン病では声が小さくなったり、発声がしにくくなります。また嚥下障害(食べ物を飲み込みづらくなる)になりやすいです。

言語聴覚療法では呼吸訓練、構音訓練、嚥下訓練、顔面・口・舌の運動などを行います。

⑦呼吸訓練:深呼吸を行います。また深呼吸をするために胸郭を広げる体操を行います。

⑧構音訓練:発声練習や活舌よく大きな声で話す練習をします。

⑨嚥下訓練:食べ物を飲み込むための喉の筋肉を鍛えたり、舌の運動を行います。誤嚥に注意しながら実際に食べ物を食べて飲み込む練習をします。


⑩音楽療法

パーキンソン病は音によるリズム刺激が運動症状の改善に効果的とされています。そこで音楽に合わせて身体を動かす音楽療法が注目されています。

リズムや音楽に合わせて身体を動かすことで、動き出しのきっかけやタイミング、スピードなどが意識でき、歩行などの動作をスムーズします。



パーキンソン病のリハビリの効果

パーキンソン病のリハビリの効果について進行予防と身体機能の維持といった観点から解説します。


進行の予防

発症早期~中期のパーキンソン病患者さんに対し6か月以上の長期的なリハビリを実施することで、リハビリをしていない人たちと比べて「オフ期(薬が効いていない時間)の運動症状」を改善し、「抗パーキンソン病薬の内服量」が減少することが報告されています[1]。

一般的にオフ期(薬が効いていない時間)に運動症状の増悪を認めることが多いため長期間のリハビリによりオフ期の運動症状が改善することはとても重要な知見です。また、抗パーキンソン病薬の内服量が増加することで副作用の発生リスクや医療費が増大するため、リハビリで内服量が減少することはとても意義深いものです。


身体機能の維持

お一人で歩行が可能なパーキンソン病の方を対象に歩行トレーニング・バランストレーニング・筋力トレーニング・ストレッチ・有酸素運動などのリハビリプログラムを長期的に継続した結果、5年後も歩行速度、筋力、バランス能力が維持されていたという報告されています[2]。

パーキンソン病は進行性の病気のため徐々に筋力や歩行能力といった身体機能が低下し、日常生活動作に困難さが生じていきます。リハビリを継続し身体機能の低下をいかに防ぐかが重要となります。


発症早期から長期的にリハビリを実施することは病気の進行予防や身体機能の維持に効果的です。生活動作に困難さが生じる前からリハビリを実施し身体を動かす習慣をつけておくとよいでしょう。



まとめ

・パーキンソン病は進行性の疾患であり、徐々に身体機能の低下や生活動作の困難さが生じてきます。

・症状には運動症状と非運動症状があります。

・リハビリを行うことは進行の予防や身体機能の低下に対して効果的です。

・パーキンソン病の治療は薬物療法に加えてリハビリを実施することが重要です。



出典

[1]k Yohei Okada,et al.Effectiveness of Long-Term Physiotherapy in Parkinson’s Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis.Journal of Parkinson’s Disease, 2021

[2] Rebecca A States et al. Physical Functioning After 1, 3, and 5 Years of Exercise Among People With Parkinson’s Disease: A Longitudinal Observational Study. J Geriatr Phys Ther, 2017, 40(3):127-134.


守屋耕平
執筆者

守屋耕平

理学療法士、認定理学療法士(脳卒中)、認知神経リハビリテーション士
回復期リハビリ病院で10年以上、脳卒中・脊髄損傷・骨折患者を中心にリハビリテーション医療に従事。認知神経リハビリの専門家。研究活動を行いながら、科学的根拠に基づくリハビリに加え、対象者自身が感じている身体の状態や感覚などの主観的側面を活かしたリハビリを実践。認知神経リハビリの研修会講師としても活躍。

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