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脳梗塞のリハビリテーション|後遺症の片麻痺に有効な方法とは

脳梗塞のリハビリ画像

脳梗塞のリハビリはどんな種類があるの?

脳梗塞のリハビリは発症後早期から行うことが重要であると言われています。全国の診療録を紐解いてみると、脳梗塞による急性期病院への入院から3日以内にリハビリを始めた方が日常生活動作の回復が大きいことがわかってきているのです[1]。

急性期病院を退院すると必要に応じて回復期リハビリ病院に転院することになります。この急性期から回復期の間のリハビリテーションはどのようなことを行えばよいのでしょうか。リハビリ=マッサージというイメージが強いと、ベッドに寝ながら少し筋力トレーニングということを考えるかもしれません。しかし、リハビリと言いながら、マッサージをしたり、ベッドに長時間寝ていても運動能力や日常生活動作が改善することはまず考えられません。脳梗塞のリハビリには多様な種類があり、1つ1つに意味があります。今回は、脳梗塞のリハビリの種類と後遺症に対する効果について見ていくことにしましょう。


・歩行練習

脳梗塞のリハビリで代表例の1つと言えば、歩行練習です。脳梗塞の後遺症である運動麻痺では、足の機能が低下すると自力で歩くことが難しくなります。そのため、歩行練習が非常に重要になります。この際、運動麻痺の程度によっては装具を活用することも選択肢の1つになります。装具は、プラスチックや金属製の支柱がついた装具を履くことで、低下した足の機能を補うために用いられます。

さらに、脳梗塞のリハビリにおいて病院で比較的多く導入されているのが免荷式トレッドミルです。免荷式トレッドミルは、体重を免荷することで実際の体重ではその重さに負けてうまく足を動かせないという状況を軽減し、その状態でランニングマシーンの上を歩く練習方法です。ハーネスと呼ばれる安全ベルトをつけて歩くため、地上では困難な速度で歩く練習が行えるというメリットもあります。


・日常生活動作

脳梗塞を発症すると、日常生活では、トイレ、入浴、食事といった自宅などで行う基本的な行為や、買い物、公共交通機関の利用などの能力も低下するため、リハビリを行うことで改善を図ります。例えば、公共交通機関の利用が大事である場合、実際にバスや電車を使ってみることで、どのような場面で危険があるか、所要時間はどのくらいかといったことを把握できるというメリットもあります。


・CI療法(Constraint Induced movement therapy)

CI療法は、積極的に麻痺した手を使うことで、その頻度や質を向上することを目的に行う脳梗塞のリハビリ方法です。動作の難易度を調整しながら練習することで、より効率的に学習することができます。脳梗塞を発症すると、麻痺していない方の手を使う習慣が身につきます。すると、麻痺した手を使う頻度は減り、麻痺した手に動け!と指令を出す脳の部位が退化してしまいます。つまり、「使わないこと」を学習してしまうのです。また、人が学習するためには「行うことによって得られた成功結果」が非常に大事です。例えば、小学生が算数を学ぶために高校数学を積極的に解いても、難しすぎて学ぶことすらできません。その人に合った適切な難易度によって学習が促されるため、難しすぎても易しすぎても学ぶことはできないのです。そのようなことに配慮しながら、学習しやすい環境を作り積極的に手を使うリハビリテーションの手法の1つがCI療法です。

実際のリハビリ場面を例に説明します。机の上に置いてコインを指でひっくり返す練習を想像してみましょう。指の動きが悪いとなかなかひっくり返すことができません。おそらく麻痺していない手で行うにしても、コインが滑って1回ではうまくできないこともあるでしょう。その際、難易度としては机とコインの間に紙、タオル、滑り止めといったものを入れることで、それぞれコインをひっくり返しやすくなるのです。このように、自分にあった難易度で脳梗塞のリハビリを行い、麻痺した手を段階的に改善していくことを目的に行います。なお、適応には幾つかの制限がありますので注意が必要です(詳細は専門家に聞きましょう)。


・促通反復療法

脳梗塞のリハビリで注目されている方法の1つが促通反復療法です。促通反復療法は、ヒトが持ち合わせている様々な反応を使いながら麻痺した手や足を自分で動かすようにイメージする、機器を使って実際に動かすといったことを何度も反復して行うリハビリの方法です。機器としては、微弱な電気が流れる装置や家庭用ハンディマッサージのように振動を与えることができるものを使用します。


・自転車エルゴメーター

脳梗塞のリハビリにおいて比較的簡単な手法として、自転車エルゴメーターの使用があります。スポーツクラブに置いてあるような自転車マシンを漕ぐ手法です。漕いでいる間、足に電気の刺激を流したり、目の前の画面で認知機能の練習ができるようなツールを行ったりすることもあります。


・末梢電気刺激療法

脳の働きを活性化させることを目的に、手足に微弱な電流を流すリハビリ方法です。勘弁に行えることから、取り入れている病院もよく見られます。麻痺して動かない筋肉に刺激を入れることができ、自分にあった刺激の強さを選択できるという点でメリットがあります。


・経頭蓋磁気刺激(TMS)

脳梗塞のリハビリ手法として最近よく耳にするのは、TMSです。TMSは電磁石を用いて電流を起こし、頭蓋骨を通して脳に刺激を与える方法です。


・経頭蓋直流電気刺激(tDCS)

tDCSは、TMSと同様に頭蓋骨を通して電気を脳に伝えるリハビリ手法です。TMSよりも刺激が弱く感じるという点でメリットがあります。


いかがでしたでしょうか。これまで受けてきた、または受けている脳梗塞のリハビリ手法はありましたか?

今回は脳梗塞のリハビリにおいて臨床研究により検証が進んでいる手法から選択して紹介したため、すべてを網羅できているわけではありません。この他にも、明確な根拠はないものの医療現場でよく行われている手技は多くあります。それらの効果は不明ですが、入院期間が制限され、退院後にリハビリを受ける機会が多くない現状では、より効率が良く、根拠が検証された手法を知っておくことも大事です。上記のリハビリ方法については、専門家に聞いてみるとより詳しく知ることができるかもしれません。



脳梗塞の後遺症はリハビリで良くなるの?効果について解説

それでは次に、後遺症に対する効果が検証されている脳梗塞のリハビリ方法について見ることにしましょう。

今回は、脳卒中治療ガイドライン2015などに掲載されている手法について一部を紹介します。


・免荷式トレッドミル

歩く練習を行う場合、平地を歩くかスポーツジムにあるようなランニングマシーン(トレッドミル)の上を歩くことになります。しかし、後遺症が重度な方で歩く量を多くしたい場合や軽度であっても早く歩く練習をしたい場合などには、足にかかる体重を少し軽くして歩きやすくした方が良いと言われています。その際、役に立つ機械が免荷式トレッドミルです。効果については様々な研究で報告されており、平地歩行と比較して効果があると述べているものから[2]、大きな改善は認められないと述べているもの[3-5]まで様々です。最近(2017年12月時点)では、後述するtDCSという手法と組み合わせて行うとより歩く能力が改善することが近年わかってきています[6]。脳梗塞を発症してからどのくらい経ったかや機能によっても効果は異なることに留意してリハビリを行う必要があります。


・下肢の装具療法

脳梗塞の後遺症の1つである運動麻痺では、足首が動かなくなったり、膝に力が入らなかったりします。特に、歩くときに体の中で唯一床と接点を持ち、土台となる足の力が弱いと、いくら膝や股関節が強くてもうまく歩けないものです。そこで脳卒中治療ガイドライン2015において推奨されている方法が、装具療法です(推奨度B)[7]。装具療法は、プラスチックや金属でできた支柱を足に装着し、足の弱い機能を補う役割を持ちます。効果として、安定して歩くことができたり[8]、歩く速さが増す[8]といった報告がされています。他方、一度装具を履くと担当する理学療法士や作業療法士によっては、その後の足の機能の変化を見落としてしまうことも多くあります。装具療法を行っていても、適宜足の動きが変わっていないかなどチェックすることが大事です。


・CI療法(Constraint Induced Movement Therapy)

CI療法の効果については、発症後早期から慢性期まで幅広く効果が認められています[9]。例えば、CI療法は通常のリハビリよりも上肢の機能を改善する、手の使用頻度が増すといった精度の高い報告がされており、脳卒中のリハビリの中ではコンセンサスの得られた手法になりつつあります。他方、CI療法を実施している医療機関は多くないですし、介護サービスで実施されているところはほとんどありません。今後より多くの患者さんにCI療法が提供されることが期待されます。


・促通反復療法

促通反復療法の効果についてもCI療法と同様幾つかの研究が報告されています[10]。特に、リハビリ業界における有名な研究雑誌の1つに掲載された論文では、促通反復療法によって上肢の機能や物品を操作する能力が通常のリハビリよりも向上することが報告されました。しかし、この方法もCI療法と同様に、どのリハビリ職種でも実施できる方法ではないため、サービスを受けることのできる機関・施設を探す必要があります。


この他にも電気刺激療法と運動を組み合わせることで効果があるという論文など効果的なな方法が研究によって明らかになっています。このような研究報告を参考にすると、「なぜその治療法を行うのか?」という証拠になります。もちろん、証拠として報告されていないリハビリ手法も行ってはいけないということは決してありません。しかし、もしリハビリを受けるとしたら、そのような証拠があるか、ないかといった説明は欲しいと思う方は少なくないのではないでしょうか。



脳梗塞のリハビリに必要な期間と費用について

脳梗塞のリハビリに必要な期間は人それぞれです。入院期間が1週間で終わる人もいれば、6か月以上入院する方もいます。麻痺した機能は3-6か月で頭打ちになるという報告もいくつかありますが、これはあくまで機能の話であり、日常生活における動きの能力は頭打ちになることはありません。退院後にも集中的かつ継続的なリハビリを行うことで、自分が目指す能力回復を達成できる可能性は向上します。現在の保険制度では、退院後に十分なリハビリを受けることは難しいと感じる方もいると思いますが、できるだけ多くのリハビリを受けることができるように工夫することも大事です。


脳梗塞のリハビリにかかる費用についても、入院日数や退院後のサービス量、リハビリを受ける機会などによって変わります。例えば、回復期リハビリテーション病院でリハビリを受けると、20分で245点(2,450円)の医療費が発生します(様々な基準によって費用は変動しますので一概には言えません)。1日に3時間のリハビリを受けると、約23,000円程度かかります。もし回復リハビリテーション病院に90日間入院すれば、2,000,000円の費用が発生するのです。もちろん、医療保険によって3割負担であれば600,000円、1割負担であれば200,000円になります。さらに退院後も通院したり介護保険を使えば、加算されますし、入院料や薬の費用、その間に働けないことを考えるとその分の負担が出てきます。このような高額な費用がかかるのであれば、より効果的なリハビリを受けたいと思う方は少なくないのではないでしょうか。


効果的で確立したリハビリ手法はまだまだ少ないのが現状ですが、もしどのような手法が良いか気になる方は上述したリハビリ手法の効果を専門家に聞いてみてください。



まとめ

今回は脳梗塞のリハビリ手法について、後遺症への対策や効果、費用、期間などを含めて解説しました。効果的なリハビリにより目指したい自分像の実現に近づける可能性があります。リハビリの量だけでなく、内容(質)に注目することも必要です。



1.http://stroke.ahajournals.org/content/early/2017/01/20/STROKEAHA.116.015147


2.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23599221


3.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21612471


4.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24519922


5.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16235304


6.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29107706


7.日本脳卒中学会:脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017対応]、株式会社協和企画、2017


8.https://webview.isho.jp/journal/detail/pdf/10.11477/mf.1552110026;jsessionid=A27E91BA44BB5A496337372ED9002A6F


9.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26446577


10.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23213077


藤本修平
執筆者

藤本修平

“脳卒中”の認定理学療法士かつ“健康情報学”の専門家。情報を上手に使いながら利用者様の日常の行動を変えることを得意とし、臨床現場での活動のみならず数々の研究活動・講演活動の経歴を持つ。

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