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【理学療法士が解説】ストレッチで治らない腰痛に!|自宅でできる体幹トレーニング3選

腰痛患者がインナーマッスルを鍛えるために体幹トレーニングをしている画像
「マッサージに行っても、すぐ腰痛がぶり返す…」
「長年ストレッチを続けているのに、一向に改善しない…」

そんなお悩みはありませんか?もしあなたがこのような経験をしているなら、その腰痛の原因は、体の表面的なコリではなく、体の奥深くにある「インナーマッスル」の衰えにあるのかもしれません。

この記事では、多くの腰痛患者様をみてきた理学療法士が、腰痛の根本改善に欠かせない「体幹」の重要性と、ご自宅で誰でも簡単に始められる効果的な体幹トレーニングを3つ厳選してご紹介します。

この記事を読めば、なぜあなたの腰痛が改善しなかったのかが分かり、痛みの再発しにくい体作りの第一歩を踏み出すことができます。

なぜ、あなたの腰痛はストレッチだけでは改善しないのか?

腰痛に悩む多くの方が、ストレッチやマッサージを試します。これらは一時的に筋肉の緊張を和らげるのに有効ですが、痛みがすぐに戻ってしまう場合、根本的な原因にアプローチできていない可能性があります。


 


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本当の原因は「インナーマッスル」の衰えにあるかも

実は、慢性的な腰痛の背景には「体を支える筋力の低下」、特に「インナーマッスル」と呼ばれる深層筋の機能不全が隠れていることが少なくありません。


インナーマッスルは、背骨(腰椎)のすぐ近くに付着し、骨盤を安定させる「天然のコルセット」のような役割を担っています【1】。この筋肉が弱ると、姿勢が崩れやすくなり、日常のささいな動きでも腰に過剰な負担がかかってしまうのです【2】。



体幹トレーニングがもたらす3つのメリット

体幹トレーニングによってインナーマッスルを正しく使えるようになると、ストレッチだけでは得られにくい、以下のような根本的な改善が期待できます。



  • 姿勢の安定性が高まる: 背骨が適切に支えられ、猫背や反り腰が改善する。

  • 腰椎への負担が軽減される: 日常動作での衝撃を筋肉が吸収し、腰への負担が減る。

  • 痛みが再発しにくい体になる: 正しい体の使い方が身につき、腰痛の根本原因を取り除くことができる。



腰痛改善の鍵「インナーマッスル」とは?

体幹の筋肉は、役割によって大きく2種類に分けられます。



ローカルマッスル(インナーマッスル)


  • 代表的な筋肉: 腹横筋(ふくおうきん)、多裂筋(たれつきん)など

  • 役割: 体の深部にあり、背骨の一つひとつを安定させる。姿勢の細かな制御を担う。まさに「天然のコルセット」です。



グローバルマッスル(アウターマッスル)


  • 代表的な筋肉: 腹直筋(ふくちょくきん)、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)など

  • 役割: 体の表層にあり、体を曲げたり反らしたりする大きな動きを生み出す。


 


腰痛がある方は、アウターマッスルばかりが過剰に働き、インナーマッスルがうまく使えていない「筋肉のアンバランス」状態に陥っていることが多いため、まずはインナーマッスルを目覚めさせることが非常に重要です【3】。



腰痛改善の近道!体幹トレーニングを効果的に行う3つのステップ

やみくもに腹筋運動をしても、腰痛はかえって悪化することがあります。大切なのは「強くする前に、うまく使えるようにする」こと。以下のステップで段階的に進めるのが効果的です。



  1. 覚える(活性化): まずはインナーマッスルが「ON」になる感覚を掴む。(例:ドローイン)

  2. 安定させる(固定): 正しい姿勢をキープしながら、軽い負荷をかける。(例:ブリッジ)

  3. 動きの中で使う(応用): 手足を動かす中で、体幹の安定を保つ練習をする。(例:四つ這いエクササイズ)



【初心者向け】理学療法士が教える!自宅でできる体幹トレーニング3選

今日から始められる、腰痛改善のための基本的なエクササイズです。痛みが出ない範囲で、ゆっくり丁寧に行いましょう。



1. ドローイン|基本の呼吸で腹横筋をONにする

「天然のコルセット」である腹横筋を働かせる、最も基本的で重要なエクササイズです。



  • 目的: 腹横筋の活性化

  • 方法:

    1. 仰向けに寝て、両膝を軽く立てます。

    2. ゆっくりと息を吐きながら、おへそを背骨に近づけるように、お腹を薄くへこませていきます。

    3. お腹をへこませたまま、浅い呼吸を続けます。



  • 目安: 10秒キープ × 5回

  • ポイント: 腰で床を強く押し付けすぎないように注意。肋骨の下あたりに軽く手を当て、お腹が硬くなるのを感じましょう。


 




2. バックブリッジ|お尻と背中を連動させる

お尻の筋肉(大殿筋)と背中の筋肉(多裂筋)を使い、体幹を安定させる力を養います。



  • 目的: 殿筋群・多裂筋の強化と体幹の安定

  • 方法:

    1. 仰向けのまま、膝を立て、足は肩幅程度に開きます。

    2. 息を吐きながら、お尻をゆっくりと持ち上げます。

    3. 肩から膝までが一直線になったところで止めます。



  • 目安: 5秒キープ × 10回

  • ポイント: 腰を反らしすぎると痛みの原因になります。お腹とお尻にキュッと力を入れて、体が一直線になるよう意識してください。


 




3. 四つ這いレッグレイズ|ぶれない体幹を作る

動きの中で体幹を安定させる、一歩進んだエクササイズです。



  • 目的: 多裂筋・脊柱起立筋の活性化とバランス能力の向上

  • 方法:

    1. 肩の真下に手、股関節の真下に膝がくるように四つ這いになります。

    2. ドローインでお腹に軽く力を入れた状態を保ちます。

    3. 息を吐きながら、片脚をゆっくりと後ろにまっすぐ伸ばします。



  • 目安: 左右交互に10回ずつ

  • ポイント: 脚を上げたときに腰が反ったり、骨盤が左右に傾いたりしないように注意しましょう。おへそが常に真下を向いているイメージで行うと効果的です【4】【5】。


 




腰痛トレーニングに関するよくある質問(Q&A)

Q1. トレーニングは毎日やった方がいいですか?


 


A. 始めは週に3〜4日を目安に行いましょう。筋肉の回復も重要です。慣れてきたら、ドローインのような軽い運動は毎日行っても構いません。何よりも「継続」が力になります。


 


Q2. 痛みがある時に行っても大丈夫ですか?


 


A. 強い痛みや、動かしたときに激痛が走る場合は中止してください。また、足にしびれが出るなどの症状がある場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診してください。「気持ちいい」「少しきつい」と感じる範囲で行うのが原則です。


 


Q3. 効果はどれくらいで実感できますか?


 


A. 個人差はありますが、2〜3週間続けると「姿勢が良くなった」「長時間座っていても疲れにくくなった」といった変化を感じ始める方が多いです。研究でも、継続的な体幹トレーニングが腰痛を軽減させることが報告されています【6】。焦らず、ご自身のペースで続けていきましょう。



まとめ

体幹トレーニングは、腰痛に対して即効性のある魔法ではありません。しかし、地道に継続することで、あなたの体は確実に変わっていきます。



  • インナーマッスルが正しく働くようになる

  • 姿勢が安定し、腰への負担が減る

  • 結果として、痛みが再発しにくい「真に強い体」が手に入る


今回ご紹介したトレーニングは、そのための第一歩です。


もし、痛みが非常に強い場合や、トレーニングを行っても改善が見られない、または不安がある場合は、一人で抱え込まずに整形外科や理学療法士のいるクリニックなど、専門家にご相談ください。あなたの症状に合った、最適なアドバイスをもらえるはずです。


 



出典

1.Hodges PW, Richardson CA. Delayed postural contraction of transversus abdominis in low back pain associated with movement of the lower limb. J Spinal Disord. 1998;11(1):46–56.


2.Hodges PW, Danneels L. Changes in structure and function of the back muscles in low back pain: different time points, observations, and mechanisms. J Orthop Sports Phys Ther. 2019;49(6):464–476. doi:10.2519/jospt.2019.8827


3.van Dieën JH, Reeves NP, Kawchuk G, van Dillen LR, Hodges PW. Motor control changes in low back pain: divergence in presentations and mechanisms. J Orthop Sports Phys Ther. 2019;49(6):370–379. doi:10.2519/jospt.2019.7917


4.大久保雄. 体幹筋機能のエビデンスとアスレティックトレーニング. 日本アスレティックトレーニング学会誌. 2019;5(1):3–11.


5.Shiina I, Okubo Y, Kaneoka K, et al. Electromyographic analysis of transversus abdominis and lumbar multifidus using wire electrodes during lumbar stabilization exercises. J Orthop Sports Phys Ther. 2010;40(11):743–750. doi:10.2519/jospt.2010.3192


6.Choi SA, Cynn HS, Kim YJ, Lee JH, Kim SH, Kim MJ. A 12-week lumbar stabilization exercise program can improve postural balance in older adults with chronic low back pain: a randomized controlled trial. J Bone Metab. 2022;29(2):85–93. doi:10.11005/jbm.2022.29.2.85


大南尚
執筆者

大南尚

理学療法士 保健医療修士 整形外科クリニックでは外来、通所、訪問リハビリテーションに携わり、身体の痛みや動きの困難さに悩まれている方々を多く担当してきました。 また大学院にて呼吸や歩行などの動作に影響を与える胸郭に関する研究をしており、身体の動きやすさや動作の質を高めていきたい方々にもお役立ちできます。

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