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運動イメージを活用したリハビリが動作を変える近道になる?

脳梗塞による運動イメージの低下とは?

後遺症の一つである運動イメージ

リハビリの中で「教えられたとおりにやっているつもりなのにスムーズに動かせない」、「何度も同じ動作を注意されてしまう」といった経験はありませんか?


これは正しい動きをイメージできていないことが原因の可能性があります。


脳は身体を動かす(運動実行)だけでなく、どのように身体を動かすかという運動実行の準備も同時に行っています。


そのため脳梗塞を含むさまざまな脳疾患によって運動イメージ能力が低下することが報告されています[1]。また、脳梗塞発症から麻痺側の身体を動かす頻度が少なくなってしまうことにより、次第に病前のような正しい手の動かし方、歩き方を脳が忘れてしまう方もいらっしゃいます。



運動イメージとは?

運動イメージとは「心的にある動作を想像すること」です。例えば、「子供の頭をなでる」動作をイメージしてみましょう。


実際に手を動かさなくても、やさしく包み込むような手の構えや頭に触れたときの柔らかい感触、あるいは愛しくなる気持ちなどさまざまなことがイメージできるのではないでしょうか?


このように実際に身体を動かさずに、その動きをやってみたらどのような感じがするのかを想像することが運動イメージです。


私であれば野球のボールを握ったときの指先の感触や、ボールを投げる動作などはとてもイメージしやすいです。


みなさんもご自分になじみ深い動きでイメージをしてみると鮮明にイメージできるかもしれません。


このように上手にできる動作はイメージしやすく、逆に不慣れで上手にできない動作はイメージがしにくくなります[2]。



運動イメージを活用したリハビリとは?

運動イメージをリハビリに活用することで麻痺側の手の機能や歩行などの動作能力が改善することが報告されています[3,4]。


運動イメージを活用したリハビリでは麻痺側の手足を実際には動かさず、頭の中で手足を動かしたり、物を持つ動作や歩行を想像することを行います。


また、運動を想像する以外にも鏡を使用し麻痺肢の運動錯覚を用いる「ミラーセラピー」[5]や他者の動きを観察してイメージをする「運動観察療法」[6]も広義には運動イメージを活用したリハビリに含まれます。


動作練習とミラーセラピーを併用することで、動作練習単独よりも麻痺側の手の機能が向上したという報告があります[7]。



動きの改善に役立つ可能性がある運動イメージのポイント

みなさんも麻痺側の手足を動かすイメージをしてみてください。


いかがでしょうか?イメージがしっかりとできると感じた方もいれば、まったくできないと感じた方もいらっしゃると思います。 実はしっかりとイメージができると感じた方の中にも、動きを変化させることに必要な運動イメージができていないことがあります。



運動イメージのポイントは2つ

その①:「自分自身を外から見ているようなイメージ」ではなく、「実際に手や足が動いている動きの感覚をイメージ」をすることであり、前者を「視覚的運動イメージ」、後者を「筋感覚的運動イメージ」と呼びます[8]。


例えば、手首を動かすイメージをしたときに、手首の関節が動いている感覚はありますか?前腕に力が入る感覚はありますか?


動きの改善のためには身体が動いている感覚をしっかりとイメージするのがポイントです。



もうひとつ、大切なポイントがあります

その②:麻痺していない側の身体を動かしたときと同じ感覚を麻痺側でもイメージすること[9]。


麻痺側の身体の動きをイメージした時に「軽く・楽に・スムーズ」に動いている感覚がイメージできていますか?多くの方は「重たい感じ」や「硬くて突っ張る感じ」、場合によっては「痛みを感じる」方もいらっしゃいます。


運動イメージは運動実行の準備と似通った脳の働きであると考えられています[10]。そのため、動かす前から不自然な動きをイメージしてしまうと、脳は正しい動きを行いにくくなってしまう可能性があります。


そのような場合、麻痺側を動かす前に反対側の身体をゆっくり動かし丁寧に動きを感じてみましょう。


次に反対側の「軽く・楽に・スムーズ」に動く感覚を麻痺側でもイメージしてみましょう。


麻痺していない側と同じ動きをしっかりとイメージできたら実際に麻痺側を動かしてみましょう。


このように正しい動きをイメージしてから実際に身体を動かす練習をすることで動きのコツを掴みやすくなったり、動きを良い方向に変化させる可能性があります。



まとめ

いかがだったでしょうか?


運動を繰り返し反復していくことはとても大切ですが、その前に身体に覚えさせたい正しい動きを丁寧にイメージしてみることが改善の近道かもしれません。



出典


  1. Kerry McInnes, et al.:Specific Brain Lesions Impair Explicit Motor Imagery Ability: A Systematic Review of the Evidence. Arch Phys Med Rehabilitation. 2016; 97(3): 478-489.

  2. Alissa D Fourkas et al:Kinesthetic Imagery and Tool-Specific Modulation of Corticospinal Representations in Expert Tennis Players. Cereb Cortex. 2008; 18(10): 2382-90.

  3. Peter Langhorne, et al.:Motor Recovery After Stroke: A Systematic Review. Lancet Neurol. 2009; 8(8): 741-54.

  4. Zaqueline Fernandes Guerra, et al.:Motor Imagery Training After Stroke: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. J Neurol Phys Ther. 2017; 41(4): 205-214.

  5. Holm Thieme, et al.:Mirror Therapy for Improving Motor Function After Stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2018; 7(7):

  6. Elisabetta Sarasso, et al.:Action Observation Training to Improve Motor Function Recovery: A Systematic Review. Arch Physiother. 2015; 5,14.

  7. Jin A Yoon, et al.:Effect of Constraint-Induced Movement Therapy and Mirror Therapy for Patients with Subacute Stroke. Annals of Rehabilitation Medicine. 2014; 38(4): 458-66.

  8. Aymeric Guillot, et al.:Brain Activity During Visual Versus Kinesthetic Imagery: An fMRI Study. Human Brain Mapping. 2009; 30 (7): 2157-72.

  9. CarloPerfetti:脳のリハビリテーション:認知運動療法の提言[1]中枢神経疾患、小池美納訳、株式会社協同医書出版社. 2005

  10. Marc Jeannerod:The representing brain : Neural correlates of motor intention and imagery. Behav Brain Sci. 1994; 17: 187-245.


岩澤 尚人
執筆者

岩澤 尚人

理学療法士
回復期リハビリ病院において10年以上脳卒中患者を中心に経験してきました。立つ、歩くことが困難な状態から、歩行の再獲得までの身体的、及び精神的サポートに加え、装具等の必要な道具のご提案ができることが強みです。より利用者が楽に体が動かせること、歩けることを追及していきます。

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