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熱中症対策で注目「暑熱順化」とは?高齢者を守る最新情報と実践方法

近年の夏場は最高気温の更新が相次ぎ、昨年2024年は熱中症による救急搬送人数が累計97,578人で調査開始以降最も多い搬送人数を記録しました。
特に高齢者が割合として多く、全体の57.4%を占めていました。

データの通り、高齢者は熱中症になりやすく、夏場の外出には細心の注意が必要となります。
今回の記事では、高齢者が熱中症になりやすい背景から、近年注目される「暑熱順化」について、概要と方法についてリハビリ施設の視点から解説していきたいと思います。

1.高齢者が熱中症になりやすい背景

ヒトは加齢変化に伴い様々な機能の低下を引き起こします。後述する加齢変化や高齢者特有の課題が熱中症を引き起こすリスクになっていると考えられています。



  • 体温調節機能の低下:

    • 発汗機能の低下:汗をかく量が減少し、体温を下げにくくなります。

    • 皮膚血管の収縮:皮膚の血管が収縮しやすく、体の熱を放出しにくくなります。



  • 体内の水分量の低下: 筋肉は体内の水分を貯蔵する臓器ですが、筋肉量が低下する高齢者は体内の水分量が減少し、脱水状態になりやすくなります。

  • 喉の渇きを感じにくい: 喉の渇きを感じる感覚が鈍くなり、水分補給が遅れがちになります。

  • 基礎疾患の影響: 高血圧、糖尿病、心疾患、腎機能障害などの基礎疾患があると、体内の水分量を保つ機能が低下してしまい脱水や体温調整に影響を及ぼします。

  • 薬の影響: 利尿薬、降圧剤、抗精神薬など、一部の薬は脱水を促進したり、体温調節機能を阻害したりする可能性があり、熱中症のリスクを高めます。

  • 住環境: 断熱性の低い住宅や、エアコンのない部屋に住んでいる場合、室温が上昇しやすく、熱中症のリスクが高まります。エアコンを使う習慣がない方も多くいらっしゃいます。

  • 社会的孤立: 一人暮らしの高齢者は、周囲の人が体調の変化に気づきにくく、熱中症の発見が遅れることがあります。

  • 暑さに対する意識の低下: 「昔はこんな暑くなかった」「自分は大丈夫」など、暑さに対する警戒心が薄いと、対策が遅れることがあります。


これらの要因が重なることで、高齢者は熱中症になりやすく、重症化しやすい傾向にあります。


猛暑日などは不要不急の外出を避けるべきではありますが、社会生活を営む以上、外出を全くしないということは困難と言えます。


だからこそ、いざという外出時や外出予定を控える場合には、水分補給などの一般的な熱中症対策に合わせて、暑熱順化という取り組みが大切になってきます。




2.暑熱順化とは?メカニズムをわかりやすく解説

暑熱順化とは、数日から2週間かけて、体を徐々に暑さに慣らしていくことで、発汗量の増加や循環機能の改善など、様々な生理的な変化を引き起こし、熱中症のリスクを軽減するプロセスです。


暑熱順化のメカニズム


暑熱順化プロセスを行うことで以下に記載する効果を期待しています。



  1. 発汗量の増加: 熱くなった身体を冷ますのに必須なのが汗をかくことです。汗をかく習慣をつけることで暑い環境で効率的な発汗を促します。

  2. 循環血液量の増加: 血液量が増加することで、より多くの血液を皮膚に送り、体温を下げることができます。

  3. 心拍数の低下: 同じ運動強度でも、心臓や身体への負担が軽減されます。

  4. 血液中の塩分濃度の低下: 汗に含まれる塩分が減少し、脱水症状を起こしにくくなります。


これらの変化により、暑さに強い体を作ることができます。



3. 最新研究に基づく、効果的な暑熱順化の方法

暑熱順化は、以下の方法で効果的に行うことができます。特に高齢者の場合は、無理のない範囲で、体調に合わせて行うことが重要です。



①軽めの運動

種類


ウォーキング、サイクリング、軽い筋力トレーニング


具体的な方法


1日30分程度行う。室内で行う場合は、エアコンを弱めに設定し、少し汗ばむ程度にする。


注意点


無理のない範囲で、体調に合わせて運動強度を調整する。心臓病などの持病がある場合は、事前に医師に相談する。運動中は、こまめな水分補給を心掛ける。


期待される効果


発汗量の増加、循環機能の改善、心肺機能の向上、筋肉量の増加



②入浴

具体的な方法


40℃程度の湯船に、10-15分程度浸かる。半身浴でも効果的。


注意点


のぼせないように、体調に合わせて入浴時間を調整する。入浴前後に水分補給を忘れずに。入浴中は、家族に声をかけるなど、見守り体制を整える。


期待される効果


皮膚血管の拡張、発汗量の増加、血流の改善



③室温調整

具体的な方法


エアコンなどを活用し、日中は28℃を目安に室温を調整する。ただし、風が直接当たらないように注意する。


注意点


温度計・湿度計を活用し、室温・湿度を適切に管理する。夜間は、タイマー機能などを活用し、室温が上がりすぎないようにする。


期待される効果


体温の急激な上昇を防ぐ。



4. 実施時のポイント

・4〜14日程度を目安に取り組んでみましょう


暑熱順化には、通常4日から2週間程度かかります。外出予定がある場合には計画的に身体を慣らしていくことをお勧めします。


 


・本格的な夏が始まる前に取り組み始めましょう


梅雨明け前から暑熱順化を始めると、本格的な夏に備えることができます。


 


・中断するとリセット


暑熱順化の効果は、2週間程度で失われるため、継続することが重要です。休み明けや生活習慣が乱れた時期などは注意しましょう。


 


・個人のペースで無理なく


 暑熱順化の効果には個人差があります。体調に合わせて、無理のない範囲で行いましょう。


 


・朝の時間帯がお勧め


 6月には30度を超える日もありました。朝5〜6時くらいの気温が上がり始める前がお勧めです。


 


・リハビリ施設も検討ください


 当施設のようなリハビリ施設はリハビリの国家資格を持った専門家が、個人の能力に合わせて運動を提供しています。室内でマシンなどを活用したプログラム設計やオンラインを活用した自宅での運動支援ができますので、暑い日中も安心して取り組めます。


 予防プランのご用意もございますので、真夏の運動不足の解消や計画的な運動にご検討ください。


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5.まとめ


暑熱順化は、高齢者の熱中症予防に非常に効果的な対策です。リハビリ施設の皆様が、ブログを通じて、正しい知識を広め、高齢者の健康を守る一助となることを願っています。


重要な注意点:



  • 個々の状況に合わせて専門家(医師や理学療法士など)に相談することが重要です。

  • 熱中症が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診してください。



出典


小川公寛
執筆者

小川公寛

理学療法士
急性期の総合病院と外来の整形クリニックにて、整形外科疾患を中心に内部疾患や脳血管疾患など様々な疾患を呈した患者様のリハビリに携わってきました。入院中と退院後の生活にギャップを感じる方も多く担当してきたため、生活を送る上で少しでも不安が払拭できるよう先々を見据えたリハビリを心がけています。

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