【理学療法士が解説】圧迫骨折による痛みと姿勢の悪化|原因と治療、再発を防ぐリハビリの重要性

特に高齢者や骨粗鬆症をお持ちの方は、日常のちょっとした動作で骨折を起こすことがあります。しかも、3人に2人は無症状で進行してしまうため、気づかないうちに痛みや姿勢の悪化につながる場合もあります。
本記事では圧迫骨折の原因や治療、痛みや姿勢に対するリハビリ方法について説明していきます。
1.圧迫骨折とは?原因と特徴
圧迫骨折は、背骨をつくる椎体(ついたい)がつぶれるように変形してしまう骨折です。
胸腰椎移行部という胸椎(胸の骨)と腰椎(腰の骨)の間が好発部位とされています。
特に骨粗しょう症を持つ高齢者に多く発生し、「四大骨折(大腿骨頸部骨折・上腕骨近位部骨折・橈骨遠位端骨折・脊椎圧迫骨折)」の1つとされています。
特徴として、
- 無症状で起こる(無症候性)ことがある
- 一度起こると、その後も多発しやすい
という点があり、気づかないうちに背骨の変形や姿勢の悪化が進んでしまうこともあります。
また発症率は年齢とともに増加し、特に女性で多いとされています。
年齢別の女性の発症率では
・50歳代:5.2/1000人年(既往骨折なしの場合)
・70歳代:24.5/1000人年(同上)
・80歳代:56.1/1000人年(同上)
・既往骨折ありだとさらに高率(70歳代で 88.0/1000 人年)。
加齢とともに注意が必要な疾患の1つといえます[1]。
2.圧迫骨折の治療法|保存療法と手術療法の違い
圧迫骨折の治療は大きく「保存療法」と「手術療法」に分かれます。
多くの患者さんは保存療法で対応可能であり、手術が必要になるのは「強い痛みが続く場合」や「骨の変形が大きい場合」に限られます[2]。
保存療法
①装具療法(コルセット)
目的
・背骨を安定させ、骨折部の動きを抑える
・痛みみを軽くして、早くリハビリを始められるようにする
効果
・動いたときの痛みを和らげる
・背骨の変形を抑える
・姿勢保持をサポートする
ただし、長期間の使用は筋力低下につながるため、短期間+リハビリ併用が大切です。
また夏場など暑さで外してしまう方もいますが、特に最初の8週間は重要です。コルセットを着用することで痛みを軽減し、リハビリを安全に進められます。
②薬物療法
目的
・骨折による痛みをコントロールする
・骨粗しょう症の治療を行い、新しい骨折を予防する
効果
・痛みを抑える薬(NSAIDsなど)で生活動作がしやすくなる
・骨粗しょう症薬で骨の強さを改善し、再骨折を防ぐ
圧迫骨折を起こした方は、元々骨粗しょう症であることが多いです。そのため骨粗しょう症の治療もセットで考える必要があります。
③運動療法(リハビリ)
目的
・体幹や足の力を鍛えて姿勢を保つ
・早くから体を動かし、生活機能の低下を防ぐ
効果
・体幹(腹部や背中)筋力向上
・バランス能力の向上、転倒予防[3]
・日常生活動作(ADL)の改善
圧迫骨折を受傷し、安静にしていると筋力が落ちるといった二次的な問題も生じるため適切な運動を実施していく必要があります。
手術療法
骨セメントを背骨に入れて固定する方法(PVP・BKP)と呼ばれる手術方法があり、痛みの軽減や骨の安定化が期待できます。
*手術療法が必要なケース
・保存療法で痛みが改善しない場合
・骨折の変形が強く、神経を圧迫している場合
3.圧迫骨折後のリハビリ|なぜ重要なのか?
脊椎圧迫骨折の治療の基本は、骨折部の安定性を図ることです。
受傷すると最初は安静にすることが必要となりますが、安静にすることが続くと筋力が低下してしまいます。
それに加えても背中の筋肉は、加齢とともに弱くなっていきます。
そこに圧迫骨折が加わることで、さらに筋力が落ちやすくなり、次のような悪循環につながります。
・背中が丸くなる(円背姿勢の進行)[4]
・バランスが崩れやすくなる
・再骨折や転倒のリスクが高まる
悪循環を断ち切るには装具や薬だけでは不十分です。リハビリが再骨折予防のカギとなります。
圧迫骨折の治療は、装具や薬で痛みを和らげることができますが、それだけでは再骨折や姿勢の悪化を防ぐことはできません。近年圧迫骨折の再骨折には背中の筋肉が関係しているとされています[5]。
そのため骨折後は「背筋を中心とした体幹筋力強化」が大切です。
・背筋を鍛える→背中の丸まり(円背)を防ぐ
・バランスが安定→転倒や再骨折の予防になる
・体力維持→日常生活の動作がスムーズになる
圧迫骨折後にリハビリをしていない方もいらっしゃいますが、自分では気づいていなくても姿勢が丸くなっていたり、筋力が低下している可能性があります。
背筋など体幹筋を鍛えることを中心としたリハビリが将来の転倒・再骨折予防に繋がります。
そのためには理学療法士などの専門家と安全にリハビリを実施していくことが重要です。
まとめ
圧迫骨折は高齢者に多く、骨粗しょう症が背景にあると発症しやすい骨折です。
無症状で進行することや多発することもあるため、早期発見と適切な治療・リハビリが生活の質を守るカギとなります。
多くは保存療法となり、リハビリは欠かすことができません。
腰や背中の痛み、姿勢の変化を感じた場合、早めに専門家へ相談してみましょう。
当施設では無料体験も実施しています。腰や背中の痛みは、放っておくと再骨折や転倒につながることがあります。未来の生活を守るために、まずは体験から始めてみませんか?
出典
1)Fujiwara S, Kasagi F, Masunari N, Naito K, Suzuki G, Fukunaga M. Fracture prediction from bone mineral density in Japanese men and women. J Bone Miner Res. 2003;18(8):1547-53.
2)尾原裕康. 骨粗鬆症性椎体骨折に対する保存的治療と手術適応. 脳外誌. 2018;27(4):291-299.
3)Giangregorio LM, Papaioannou A, MacIntyre NJ, Ashe MC, Heinonen A, Shipp K, et al. Too Fit To Fracture: exercise recommendations for individuals with osteoporosis or osteoporotic vertebral fracture. Osteoporos Int. 2014;25(3):821-35. doi:10.1007/s00198-013-2523-2.
4)Oishi H, Maruo K, Kusukawa T, Yamaura T, Nagao K, Toi M, et al. Clinical outcomes and risk factors associated with spinal kyphotic deformity following osteoporotic vertebral fracture. J Clin Med. 2025;14(8):2769. doi:10.3390/jcm14082769
5)Chen Z, Shi T, Li W, Sun J, Yao Z, Liu W. Role of paraspinal muscle degeneration in the occurrence and recurrence of osteoporotic vertebral fracture: A meta-analysis. Front Endocrinol (Lausanne). 2023;13:1073013. doi:10.3389/fendo.2022.1073013
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