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【理学療法士が解説】腰が痛いとき、どうすればいい?|正しい対処と治療のポイント

腰痛患者をリハビリしている画像
「なんとなく腰が重い」「朝起きたら痛くて伸ばせない」――そんな経験はありませんか? 実は、腰痛の85%は深刻な病気ではなく、正しい知識と対処法を知ることで自然に改善が期待できるものです。 この記事では、理学療法士がガイドラインに基づいて腰痛の科学的な対応法をやさしく解説します。

1.腰痛の種類を知ろう! まずは「危ない腰痛」かどうかを見極める

腰痛はすべて同じじゃない|特異的腰痛と非特異的腰痛の違い

腰のレントゲン写真から腰痛の原因を推察している画像

「腰が痛い」と一言に言っても、その原因はさまざまです。腰痛は大きく以下の2つに分類されます。【1】


 


特異的腰痛


原因が明確な腰痛(約15%)


画像検査や血液検査などで明確な病気が見つかるタイプの腰痛です。以下のような病態が含まれます



  • 背骨へのがんの転移

  • 脊椎の感染症(脊椎炎など)

  • 圧迫骨折(特に高齢者に多い)

  • 腎臓や大動脈など内臓からの痛み


これらは早期の診断と治療が重要で、放置すると命に関わる可能性もあるため注意が必要です。


 


非特異的腰痛


原因が特定できない腰痛(約85%)


病気や異常は見つからないのに痛みが出る腰痛が「非特異的腰痛」です。筋肉や関節、姿勢、ストレス、生活習慣など、複数の要因が複雑に繋がって発生すると考えられています。


このタイプの腰痛は、科学的に効果が認められている方法で正しく対処すれば改善が期待できるため、過度に心配しすぎる必要はありません。



レッドフラッグ|病院を受診すべき危険なサインとは?

腰に危ない腰痛が出ているサイン

腰痛の約85%は心配のいらない非特異的腰痛ですが、見逃してはいけない「危険な腰痛」も存在します。【1】【2】


重要なのが「レッドフラッグ(Red Flags)」と呼ばれる症状です。以下のような場合は、早めに医療機関を受診しましょう。


医療機関の受診が推奨されるサイン:



  • 安靜にしていても強い痛みが続く

  • 発熱、体重の急激な減少、倦怠感などの全身症状

  • 足のしびれや力が入らない、排尿・排便がうまくできない

  • 転倒後などで急に強い痛みが出た(高齢者に多い骨折)


これらの症状は、がん・感染・神絡障害・骨折などの可能性を示すため、ガイドラインでも早期の精密検査が強く推奨されています。「いつもと違う」「少し不安」と感じたら、迷わず医療機関に相談するのが安心です。



2.非特異的腰痛に対する治療法の全体像

治療方針は「急性期」と「慢性期」で変わる

非特異的腰痛の治療では、痛みの続いている期間によってアプローチが変わります。大きく「急性期」と「慢性期」に分けて考えるのが基本です。【2】【3】


 


急性腰痛(発症から6週間以内)



  • 急に腰が痛くなったが、危険な病態は除外されている場合

  • 過度に安靜にせず、できる範囲で日常生活を続けることが大切

  • 「腰痛は自然に回復しやすい」という正しい情報を伝えることが回復を助けます


慢性腰痛(12週間以上続く痛み)



  • 長引く腰痛は、構造的な問題だけでなく、ストレスや活動の低下などの生活要因が影響していることが多いです

  • 運動療法や認知行動療法、生活習慣の見直しが効果的

  • 薬だけに頼るのではなく、多角的なアプローチが求められます



3.治療は「薬」と「薬を使わない方法」の両方を組み合わせた対処法

腰痛の治療では、薬物療法と非薬物療法のバランスが重要です。どちらか一方に偏るのではなく、状態や時期に応じて柔軟に組み合わせていくことが推奨されます。【1】【4】



薬を使った治療(薬理学的治療)

腰痛に対して薬物療法を実施している画像

  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬

    • 急性・慢性のどちらの腰痛にも短期的に有効で、第一選択薬とされています。





  • 筋弛緩薬・抗うつ薬

    • 筋肉の緊張が強い場合や、うつ状態が影響している場合に補助的に使用されます。





  • オピオイド

    •  他の治療が無効な重度の慢性痛に対して、短期間・厳密な管理下で使用されます(依存リスクに注意)。





薬を使わない治療(非薬理学的治療)

薬を使わない治療である、心理的アプローチと運動療法を実施している画像

  • 患者教育:痛みの仕組みを理解することで、不安を軽減し前向きな行動変容が促されます。

  • ペインニューロサイエンス教育(PNE):脳と神経の視点から痛みを再理解する教育プログラムで、痛みへの過敏反応を和らげます。

  • 心理的アプローチ(CBTなど):痛みの恐怖やストレスと向き合い、再発予防にもつながります。

  • 運動療法:姿勢改善や筋力強化を目的とした運動を継続的に行うことが効果的です。


ガイドラインでは、「非薬物療法を中心に据えた対応が最も効果的」とされています。

特に慢性腰痛では、薬物療法よりも運動や心理的支援の方が回復に寄与するとする研究が増えています。



まとめ

腰痛は多くの人が経験する身近な症状ですが、その背景にはさまざまな要因が隠れています。

まずは「危ない腰痛」かどうかを見極め、必要であれば早めに医療機関を受診すること、

そうでなければ、腰痛に対する正しい理解と、日常生活の中で無理のない範囲で体を動かしていくことが、改善と再発予防につながります。


知識を味方に、正しい選択を積み重ねていくことが重要です。



出典

1.Chou R, Qaseem A, Snow V, Casey D, Cross JT Jr, Shekelle P, Owens DK; Clinical Efficacy Assessment Subcommittee of the American College of Physicians; American College of Physicians; American Pain Society Low Back Pain Guidelines Panel. Diagnosis and treatment of low back pain: a joint clinical practice guideline from the American College of Physicians and the American Pain Society. Ann Intern Med. 2007 Oct 2;147(7):.doi:10.7326/0003-4819-147-7-200710020-00006


2.Qaseem A, Wilt TJ, McLean RM, Forciea MA; Clinical Guidelines Committee of the American College of Physicians. Noninvasive treatments for acute, subacute, and chronic low back pain: a clinical practice guideline from the American College of Physicians. Ann Intern Med. 2017 Apr 4;166(7): doi:10.7326/M16-2367


3.Wong JJ, Côté P, Quesnele JJ, Stern PJ, Mior SA. Clinical practice guidelines for the noninvasive management of low back pain: a systematic review by the Ontario Protocol for Traffic Injury Management (OPTIMa) Collaboration. Eur J Pain. 2016;20(6):


4.Stochkendahl MJ, Kjaer P, Hartvigsen J, et al. National clinical guidelines for non-surgical treatment of patients with recent onset low back pain or lumbar radiculopathy. Eur Spine J. 2018;27(1):


大南尚
執筆者

大南尚

理学療法士 保健医療修士 整形外科クリニックでは外来、通所、訪問リハビリテーションに携わり、身体の痛みや動きの困難さに悩まれている方々を多く担当してきました。 また大学院にて呼吸や歩行などの動作に影響を与える胸郭に関する研究をしており、身体の動きやすさや動作の質を高めていきたい方々にもお役立ちできます。

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